カウンターのこちら側から見る世界

コーヒーにまつわるエトセトラ

先日、物は試しと一日だけではあるが喫茶店を開いてみた。
多くの友人が足を運んでくれたおかげで、ありがたいことに一日中賑わっていた。
忙しい中時間を調整して駆けつけてくれた友人たちに感謝しきりだ。

僕はカウンターという場所が好きで、もちろんお客として座るのも好きだ。
けれど、その向こう側から見る世界はもっと好きになりそうだ。

カウンター越しに眺める店内は、まるで映画のスクリーン。
僕の知らない俳優たちがそれぞれの物語を語り、浸る別世界。
それを飽くことなく眺める僕もまた、別世界の住人だ。

コーヒーやトースト、ケーキなどを供しつつ会話をする。
注文が混んでくればコーヒーを淹れることに専念する。
頼んでくれた人の好みを想像しながら微妙に配合を変えてみたり。
いかに心地よく過ごしてもらえるかを考えながら色々なことをする。

一瞬として同じ時はない、ルーティーンとは縁遠いライブ感に溢れた空間。
クリエイティビティここに極まれり、といった感さえある。
退屈を嫌う僕にとって、これほど楽しい時間はなかった。

何より「美味しい」と言っていただけた時は格別だった。
嬉しさと安堵感と、様々な感情がこみ上げてくる。
誰かに喜んでもらえるというのは、僕にとって最上の価値を持つことだ。

「あなたは人に喜んでもらえることが好きだから。現場に立ってください。」
そう言ってくれた「沖縄の父」の顔がよぎる。
平生能面のような表情しかしていない僕だが、その時ばかりはちょっといい顔をしているかも知れない。

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